KPMGの「日本企業の不正に関する実態調査」は、2006年に実施した第1回から数えて今回で8回目となります。

今回の調査では、コロナ禍の前後における不正の発生状況や対応状況を定点観測するとともに、新たに以下の3つの視点を追加しました。

1つ目はサードパーティです。欧米企業では、役員、従業員などの内部に起因する不正より、顧客やベンダーなどの第三者に起因する不正に焦点が当てられることが多くなっています。欧米企業に比べ属人化が進むとされる日本企業では、それを背景に未だ内部的な不正の対応に多くのリソースが割かれている状況ですが、「もらい事故」ともいえる第三者に起因する不正にも意識を向ける必要があります。

2つ目はサイバー攻撃です。グローバルでは、コンプライアンス違反、不正行為に加え、サイバー攻撃は企業の三大脅威の1つとされています。昨今、自社のバリューチェーンを支えるサードパーティに対するサイバー攻撃への対応を含め、グループ全体の体制構築を行うことが日本企業にとって急務となっています。

3つ目は非財務情報の虚偽表示です。グローバルレベルでのESG 投資やSGDs 経営の浸透を背景に非財務情報の開示が日本でも急速に進んでいることを受け、今後発生するであろう非財務情報の虚偽表示に対して意識を高めていく必要があります。

これら3つの視点に加え、不正発覚経路として重要な内部通報制度の浸透度合いに焦点を当てた質問項目も追加していますので、是非、自社の不正リスクマネジメントの現在地を把握する羅針盤としてご活用頂ければ幸いです。

本サーベイについて解説している、10月29日(火)大阪11月14日(木)札幌12月3日(火)福岡で開催予定の「最新の不正トレンドと不正リスク対策の実践的方策」Fraud Survey公開記念セミナーも併せてご覧ください。

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Exective Summary

PART 01 不正の発生状況

不正の発生割合はコロナ禍前の水準に戻った
不正の発覚経路としては内部通報が最多であった

過去3年間で不正が発生したと回答した上場企業の割合は 32%となり、概ね 3社に1社の割合で不正が発生している結果となった。コロナ禍の影響を受けていた前回調査(24%)よりも8ポイント増加し、コロナ禍前に実施した前々回調査( 32%)における不正の発生割合と同水準となった。この背景としては、内部通報を含む企業の監視機能がコロナの収束とともに正常化し、コロナ禍に発覚していなかった不正が顕在化した可能性が考えらえる。

また、不正が発生したと回答した企業のうち不正の発生経路に「内部からの通報」を挙げた企業の割合は58%となり、前回調査(48%)から10ポイント増加した。内部通報制度が浸透し、不正の発覚に重要な役割を果している状況がうかがえる。

不正の発生状況
損害額の大きな不正は「粉飾」「キックバック」「品質不正」が多く、主体的実行者としては役員や管理職の割合が大きい

損害額1億円以上の不正は「粉飾決算等の会計不正」「水増し発注等によるキックバックの受領」「製品表示や品質・性能記録等の偽装または偽造」の割合が上位に並んだ。これらは、協力者(黙認者を含む)の存在が想定される不正であることから、不正が長期にわたり発覚されなかったことで企業に多額の損害を与えた可能性がある。

また、同じく損害額1億円以上の不正の主体的実行者は、役員・管理職の割合が65%と大きくなることが確認された。これは、決裁権限の大きさが影響していることはもとより 、取引業者との共謀や部下の協力が得られやすい立場にあり 、不正が長期間にわたり継続される傾向がその背景にあると考えられる。

不正の発生状況

PART 02 不正リスクへの対応

8割を超える企業がデータ分析やAIを活用した不正検知に高い関心を示すものの、多くの企業において取組みが進んでいない傾向がみられた

データ分析を活用した不正検知に関心のある企業は85%を占めるものの、実際に取組んでいる企業は14%であり、さらに上記 85%の企業のうちAI を活用した不正検知に取組んでいる企業は6%に留まった。生成AI 等の浸透に伴い、企業活動におけるAI 活用が議論されているが、不正検知の領域における活用はまだ進んでいない状況が確認された。

データ分析による不正検知を高度化する障壁として、「データ分析・AIの知見を有する人材の不足」「デ―タを活用して不正リスクを検知するためのノウハウの不足」を挙げた企業は、それぞれ 62%、57%であり、「人材」「ノウハウ」を障壁として挙げた企業の割合が相対的に高い結果となった。データ分析の担い手となる人材やノウハウが不足している企業の実態を表したものと考えられる。

不正リスクへの対応

PART 03 近年および今後注目の不正論点

品質不正に対する取組みが十分に実行できていない実態が浮き彫りになった
また、非財務情報の虚偽表示リスクへの対応は十分進んでいない状況にある

品質不正に有効と思われる取組みとして「検査データの改ざんができないシステムの導入」を回答した企業は45%である一方、実際に同取組みを行った企業は19%に留まるなど、有効な取組みが十分に実行できていない実態が見受けられた。

非財務情報の虚偽表示リスク未対応(今後対応予定含む)と回答した企業は80%にのぼり、非財務情報の虚偽表示に対する企業のリスク認識や対応は十分進んでいない状況が確認された。また、非財務情報の開示制度対応に関しては、記載内容に対するモニタリング体制の未確立、リソース不足、データ収集・集計・承認プロセスの未整備などさまざまな課題に直面している状況が確認された。

近年および今後注目の不正論点

Column

・「インテリジェンス」の活用によるリスクの的確な把握と対応

・AIを活用した不正検知

・品質不正問題が生じる原因と採るべき方策

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